クラウドファンディングの製品に不具合が多いわけを想像してみる

クラウドファンディング系の製品に不具合が多いわけを想像してみました。

公開日: 2020.10.2

製品に不具合が出るバックグランド

製造ラインをコントロールしていない

PC界隈で言えば、ポケットノートPCのGPDなど、クラウドファンディングが定番化してきていますが、自社工場を持たないメーカーは、どこも品質に問題があります。GPDなんて、初期ロットは不具合だらけだったようですし。

これは仕組み上問題があって、クラウドファンディングで募集するメーカーは「デザイン by メーカー、Assembled in China」のパターンが多いのです。

このパターンは、Appleが1990年代頃から始めた方式で、現在では大小いろんなメーカーが真似しています。

ただ、多くの人が勘違いしていますが、Appleは製造を外部委託してはいますが、製造管理を含めてかなり深く製造に関与しています。設計図を渡して作ってもらうだけではありません。最近では、Apple製品を製造するための特殊な工具や機械まで自社開発しているので、Appleは「モノ(工場)と作業(人)が外注なだけ」で実質工場を自社運営しているような形態です。

一方で、クラウドファンディングの場合は、設計だけ自社で行って、製造は工場に丸投げというところが多く、不具合(不慮のトラブル)が発生しやすい仕組みになっています。

予算の問題

クラウドファンディングで募集している製品の予算は、大まかに、

  • 製造原価
  • 販管費
  • 人件費
  • 利益

の4つを賄うために価格設定されています。

通常のメーカーは、製造原価に工場への初期投資などを薄く盛り込んで、5年から10年で回収しますが、クラウドファンディングで投資を募るような会社では、工場への初期投資自体ができません。できる資金力・信用があるなら、最初から金融機関から借り入れをするはずです。

つまり、クラウドファンディングのメーカーは、「既存の工場で出来ることを組み合わせて新しいものを作る」のがほとんどで、そこに製品の品質を向上させるための予算はないことが多くなります。

メーカーとしての経験値の低さ

大手メーカーになればなるほど、歩留まりを重要視します。歩留まりとは「製造など生産全般において、原料(素材)の投入量から期待される生産量に対して、実際に得られた製品生産数(量)比率」のことで、つまりは不良品率ということです。

一方で、メーカーとして走り出しの時は「完成品を世に出すことが一番」で、歩留まりなどに意識が行きません。パッケージデザインや、マニュアルの作成、広告デザインに、販路の開拓と、新参メーカーは「売るためにやらなくてはならないこと」が山ほどあります。

不良品率をしっかり出すには不良品を検知することが大事ですが、製造数量もさほど多くない新参メーカーには、検品ノウハウも少なければ、検品にかけるコストもありません。出たとこ勝負で「不良品が出たら交換すればいい」というスタンスのところが多くなります。

ところが、実際に製品の売れ行きがよくないと交換費用や対応コストがかさんで、プロジェクトが赤字化していきます。こうなったら最後、体力のない新参メーカーは不良品のサポートをしなくなります。

不良品の管理は、多くの製品を出すメーカーであればそもそも多くの経験があり、他の製品のラインでリソースでカバーしたりできますが、単品勝負のクラウドファンディングのメーカーは、「製品一つで一発勝負」しているような状態なので、カバーできません(大手メーカーのクラウドファンディング利用は別です)。

クラウドファンディングはあくまで投資であることを肝に銘じよう

通常、投資というのは配当や株の価値でリターンを得ますが、クラウドファンディングは対価は製品なので、「目新しい製品を買っている」感覚になりますが、実質「ダイヤモンドの手に入れるための投資」に近いといって良いでしょう。蓋を開けたら素晴らしい製品になることもあるし、磨いても磨いても輝かないこともあります。

その意味では、クラウドファンディングの製品に不良品が多いのは当たり前で、仕組み上それをわかった上で投資する(購入する)ということを肝に命じておく必要があります。

投資したからにはメーカーを一緒に育てよう

クラウドファンディングに参加するということは、投資家になるということですから、暖かい目でメーカーを一緒に育てていく意識が大事ですね。

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テツ タバタ

デジモノ中毒なITライター・タバタ テツです。モバイル、パソコン、ネット回線などガジェット系やゲーム、そして関連する買い物が大好きな日本男児です。

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